1.本年2月1日に、夫の実子(親生子)の推定規定を改正した韓国の改正民法が施行されます。
その主な内容は、婚姻関係終了日から300日以内に出生した子について、婚姻中の子として出生申告がなされない限り、家庭法院(家庭裁判所)の認知の許可を得た場合には、実子(親生子)の推定が及ばなくなり、子の父が、自身の子として出生申告をすることができるというものです(民法第844条第3項、第855条の2第1項、同条第3項)。
2.韓国でも、嫡出推定を定めた日本の民法と同様に、婚姻成立日から200日後または婚姻関係終了日から300日以内に出生した子(民法旧第844条第2項)は、妻が婚姻中に懐胎した子として夫の子と推定され(同条第1項)、母親または前夫が家庭法院(家庭裁判所)に親生否認の訴えを提起し(同法旧第846条)前夫と子の実子推定を破らない限り、子の実夫は、自身の子を認知することができませんでした。
この民法844条2項が違憲であることの確認を求める憲法訴願審判請求がなされ、2015年4月30日、憲法裁判所が、民法第844条第2項のうち「婚姻関係終了の日から300日内に出生した子」の部分を違憲(憲法不合致)とする決定が下りました(2015年4月30日決定・2013憲マ623)。
違憲決定の理由は、子の実父が明白な場合にでも無条件に前夫の実子として推定することは、真実の血縁にしたがって家族関係をなそうとする者の人格権と幸福追求権を侵害するとともに、個人の尊厳と両性の平等に基づく婚姻と家族生活に関する基本権も侵害する、というものでした。
違憲決定を受けて、母親または前夫による親生否認の訴えを経なくとも、子の実父が、自ら認知を可能とする民法改正がなされたというわけです。(なお、従来と同様に、母親または前夫による親生否認の許可請求の制度も存在しています。)
3.このような韓国の民法改正にともなって、日本の家庭裁判所でも、実父による認知の許可請求ができるのかが注目されます。
認知の実質的成立要件の準拠法は、通則法29条1項、2項により、子の出生当時の認知者の本国法、認知当時の認知者の本国法、認知当時の子の本国法のいずれかの選択的適用、認知の方式の準拠法は、通則法34条により、認知の成立について適用すべき法(実質的成立要件の準拠法)または行為地法の選択的適用とされています。したがって、実質的成立要件の問題にせよ、方式の問題にせよ、実父が韓国人である場合には、上記の改正韓国民法の適用があるように考えられるからです。
※ 断りのない限り、上記では「民法」は韓国民法を意味しています。
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