去る月4日、私も弁護団に入っている訴訟の勝訴判決が出ましたので、簡単にご報告します。大阪地方裁判所での、大飯原子力発電所設置変更許可取消請求訴訟です。
大飯原子力発電所の運転を許可するのは国ですが、東日本大震災で福島第一原発が地震と津波で大被害を受け、また甚大な損害をもたらしたことを受けて、国は設置や運転の許可を出す機構を再編し、「新規制基準」を設けて、その基準を満たさなければ運転の許可を出さないことにしました。
今回の訴訟は、大飯原発について国が「新規制基準」を満たすと判断して運転許可を出したのに対して、その許可を取り消すよう求めた訴訟でした。
沢山の方が、危険な原発を稼働させたくないという思いで原告になりましたが、今回の判決は、大飯原発から約120キロメートル以内に居住する原告に限定をしたため、8名の原告が請求却下とされました。それはそれで原発事故の影響を受ける範囲を狭く見すぎたもので異議があるところです。
ただ、他の原告による訴えについて、裁判所は、国の「新規制基準」該当性調査に不備があるとして運転許可の処分を取り消しました。
大飯原発は、現在は運転停止中であったため、「運転を止める」までもないのですが、今後、国は控訴をしてくるでしょうし、そうすると処分取消の効果は生じません。
文系の私がなぜ原発訴訟の弁護団に入ったかと言いますと、それは先輩の弁護士に「入って」と言われて断れなかったことに始まります。それも、まずは佐賀県の玄海原発のプルサーマル訴訟というものからでした。その後に東日本大震災が発生し、玄海原発に加えて大飯原発の弁護団にも入ることになりました。
原発訴訟の大変なところは、原発の危険性については技術的な議論になり、技術的に安全なのかどうかは、電力会社の技術者の説明に依存しがちになるところです。その説明は正しいのかどうか、原告側もわからず、裁判官ももちろん専門家でないので大変だと思います。
そうしたブラックボックスの中身の解明のような作業では勝算が見込めないのですが、今回の勝訴判決は、実際のところ、被告国側の説明が曖昧で「裁判所の問いに答える」ものになっていなかったことによります。
裁判所は「その説明では『新規制基準を満たすと判断した』ことの説明ができていない」と判断したわけです。
原子力発電所の運転に関しては、電力会社・地元・原発労働者や技術者・影響を受ける市民等々、複雑に利害関係が絡みます。「原子力発電を止める」のは重大な政策変更ですし、「原子力発電を続ける」となれば安全でなければなりません。
「安全かどうか」は市民の重大な関心事ですから、電力会社と国は誠実に詳細に説明をする姿勢が求められます。その気持ちに、大阪地裁の裁判官3名は応えてくれました。
私は、この判決の日に別の会議があって、法廷で判決を聞けず、門前の旗出しにも立ち会えませんでした。本当に残念だったな、と、写真を見ながら思います。
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