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2018年1月の記事一覧


「韓国民法の改正-実子(親生子)の推定規定について」【金】

  韓国の法律・判例

1.本年2月1日に、夫の実子(親生子)の推定規定を改正した韓国の改正民法が施行されます。

 

その主な内容は、婚姻関係終了日から300日以内に出生した子について、婚姻中の子として出生申告がなされない限り、家庭法院(家庭裁判所)の認知の許可を得た場合には、実子(親生子)の推定が及ばなくなり、子の父が、自身の子として出生申告をすることができるというものです(民法第844条第3項、第855条の2第1項、同条第3項)。

 

2.韓国でも、嫡出推定を定めた日本の民法と同様に、婚姻成立日から200日後または婚姻関係終了日から300日以内に出生した子(民法旧第844条第2項)は、妻が婚姻中に懐胎した子として夫の子と推定され(同条第1項)、母親または前夫が家庭法院(家庭裁判所)に親生否認の訴えを提起し(同法旧第846条)前夫と子の実子推定を破らない限り、子の実夫は、自身の子を認知することができませんでした。

 

この民法844条2項が違憲であることの確認を求める憲法訴願審判請求がなされ、2015年4月30日、憲法裁判所が、民法第844条第2項のうち「婚姻関係終了の日から300日内に出生した子」の部分を違憲(憲法不合致)とする決定が下りました(2015年4月30日決定・2013憲マ623)。

 

違憲決定の理由は、子の実父が明白な場合にでも無条件に前夫の実子として推定することは、真実の血縁にしたがって家族関係をなそうとする者の人格権と幸福追求権を侵害するとともに、個人の尊厳と両性の平等に基づく婚姻と家族生活に関する基本権も侵害する、というものでした。

 

違憲決定を受けて、母親または前夫による親生否認の訴えを経なくとも、子の実父が、自ら認知を可能とする民法改正がなされたというわけです。(なお、従来と同様に、母親または前夫による親生否認の許可請求の制度も存在しています。)

 

3.このような韓国の民法改正にともなって、日本の家庭裁判所でも、実父による認知の許可請求ができるのかが注目されます。

認知の実質的成立要件の準拠法は、通則法29条1項、2項により、子の出生当時の認知者の本国法、認知当時の認知者の本国法、認知当時の子の本国法のいずれかの選択的適用、認知の方式の準拠法は、通則法34条により、認知の成立について適用すべき法(実質的成立要件の準拠法)または行為地法の選択的適用とされています。したがって、実質的成立要件の問題にせよ、方式の問題にせよ、実父が韓国人である場合には、上記の改正韓国民法の適用があるように考えられるからです。

 

※ 断りのない限り、上記では「民法」は韓国民法を意味しています。

次年度大阪弁護士会副会長当選のご挨拶【大橋】

  お知らせ

去る1月19日をもちまして、私こと、大阪弁護士会の次年度副会長に、他6名とともに当選いたしました。

 

立候補の決意をすることとなってから半年。

これまで弁護士として人権擁護委員会関係の活動や、労働関係の事件に関わり、弁護団事件を経験してきた「マチベン」から、次年度は既に4500名を超えた大阪弁護士会の会務を1年間任されることとなりました。

その責任は重いものがありますが、副会長7名で竹岡登美男次年度会長を支え、弁護士会の業務の充実と改善のために努力したいと思います。

 

特に気に掛けていますのが、役員における女性の割合です。今年度は女性副会長が2名でした。次年度は、女性は私のみです。

男女共同参画の見地から、今や行政機関では委員の構成で「女性を3割」にすることが目標とされています。当会に外部委員の推薦を求められるとき、「できれば女性の委員をお願いしたい」という条件が付けられることがよくあります。

「3割」という割合は、クリティカル・マス(量が質に転化する分岐点)という重要な割合であるそうです。

しかしながら、大阪弁護士会の役員(会長・副会長)で、これまでに女性が3割を超えたことはありません。

 

女性という属性に限らず、小規模事務所、外国籍の弁護士、企業内弁護士、障害を持つ弁護士等、少数派が一定割合以上を占めることによる議論の広がりと深化が重要だと考えます。

それで、役員にも「多様性」が確保できるよう、業務の簡素化、負担の軽減(弁護士業務との両立のしやすさ)を図りたいと思っています。

 

弁護士がそれぞれ多様な個性をもって業務に取り組むことで、法的サービスの提供にも幅が広がり、弁護士の存在が一層身近で、依頼のしやすいものになることでしょう。

 

1年間、ご依頼の業務に従事する時間、お受けする事件を控えることにはなりますが、どうぞご支援を賜りますよう、お願いいたします。

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韓国書籍「最近の韓国の法律書」【金】

  読書

業務上、事務所に韓国の法律書を所蔵し、必要なときに参照しているのですが、書籍の版が古くなり、その間に法律も改正されたこともあって、次の5冊を新たに買いました。

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(左から、宋德洙「第11版(革新版)新民法講義」、金俊鎬「民法講義 第24版」、申昌善・尹南順「第2版 新国際私法」、安春洙「国際私法」、金疇洙・金相瑢「親族・相続法 第14版」)

 

昔は、韓国の法律も、漢字とハングル混じりのものでした。しかし、現在は、漢字の部分の殆どがハングル化されており、法律書もハングルで書かれたものが殆どです。法律書がハングル化している事情について、数年前にある韓国の学者にお聞きしたところ、漢字・ハングル混じりだと、本が売れないので、出版社からハングルだけで出版してほしいという要請があるとのことでした。韓国の民法の大家である郭潤直教授が、出版社による全文ハングル化の要請に強く抵抗されておられたとのことでしたが、教授が高齢となり、お弟子さんと共著となった新版ではハングル化されているようでした。

 

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(当事務所の書棚の一部です。背表紙も、漢字、ハングルのものがそれぞれ混ざるようになりました。)

 

法律書にせよ、別のジャンルにせよ、ハングルでないと書籍が売れないのは、韓国の国民が漢字を読めなくなりつつあるからです。韓国の中学校、高校では、漢文の授業はあるものの、それ以外の授業では、漢字を使う日本と異なり、漢字を使うことは殆ど無いようです。

ただ、韓国でも、法律用語の多くは、漢字をハングルに置き換えた漢字語です。ハングルは表音文字ですので、日本語で例えていうと、すべて「ひらがな」または「カタカナ」だけで本が書かれていることになります。そうすると、文字だけである程度の意味を推測できないので、法律の学習はいっそう難しくなります。昨年7月の日韓バーリーダーズ会議で、ある韓国の弁護士から、現在の韓国のロースクール生は、タブレットを置いて、逐一法律用語を調べながら勉強していると聞きました。

以前から、多くの韓国の弁護士から、韓国のロースクールの3年間で法律を学ぶのは大変厳しいというお話を聞いていましたが、ハングルだけで法律を勉強する難しさがあることも、その理由の一つではないかと思った次第です。

韓国書籍「相続戦争」【金】

  読書

「相続戦争」(상속전쟁,주식회사 조서출판 길벗, 2015)を読了しました。

 

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http://www.kyobobook.co.kr/product/detailViewKor.laf?mallGb=KOR&ejkGb=KOR&barcode=9791186659557

 

共著者のク・サンス先生(韓国公認会計士・税理士)は、相続専門の会計士として、法務法人地平(http://www.jipyong.com)の相続チームに所属されており、同じチームの韓国弁護士の先生方と一緒に私の事務所を訪問された際に、本書を私に下さりました。

ク先生、ありがとうございました。

 

本書は、韓国相続税・贈与税法の一般的な説明に加えて、具体的な77の事例を紹介することで、難しい相続税・贈与税制について一般人にも理解できるように腐心されています。

 

日本と韓国の法律は全般的によく似ていますが、相続税法は、日本が、各相続人が取得する財産に課税する「遺産取得税方式」であるのに対し、韓国が、被相続人の財産全体に課税する「遺産課税方式」である点で、根本的に異なります。

相続税の課税対象は、日本では「相続人」が居住者か非居住者かによって異なるのに対し、韓国では「被相続人」が居住者か非居住者かによって異なります。

生前贈与についても、韓国では、相続人に対する贈与は相続開始前10年の贈与財産が相続財産に合算されて課税される点で日本と違います。

その他にも、税率、控除、生前贈与の加算の範囲、除斥期間など、日本と韓国では税制が大きく異なっています。

 

そのため、相続人や相続財産が日韓両国にまたがっている場合の相続問題の解決は非常に複雑です。日韓両国にわたる国際相続の事案を扱うときは、国際相続を専門とする日韓両国の会計士・税理士と連携することが必須です。

 

以前に、在日コリアン弁護士協会(LAZAK)の学習会で国際相続を専門とする税理士の先生を何度かお招きして勉強する機会があったのですが、本書を読むことで大変良い復習の機会となりました。

「韓国法務部、大阪弁護士会来訪」【金】

  弁護士業務

11月29日(木曜)、韓国法務部・法曹人力課に所属する朴起兌(パク・キテ)検事ほか4名の方々が、大阪弁護士会に来訪されました。

2年前の同じ時期にも、韓国の民事法制を担当している法務部の検事が大阪弁護士会に来訪され、日本の民法改正に関する質疑応答を行いました。

今回来訪された方々が所属する「法曹人力課」は、韓国の弁護士試験を担当する部署とのことで、弁護士試験の実施・採点の担当職員も一緒に来られ、日本の弁護士市場や実務修習の現状について質疑応答、意見交換を行いました。

大阪弁護士会から、国際関係、法曹養成、司法修習の各担当副会長、担当委員会の委員長・副委員長の先生方に加えて、通訳の補助者として私が参加しました。

 

韓国では、日本と同様に、ロースクール(法律専門大学院)制度が導入され、ロースクール合格者のみが法曹となるための弁護士試験を受験することができます。現行の司法試験が2017年で終了しましたので、今後、韓国で法曹となるための唯一のルートが「ロースクール→弁護士試験」となります。

韓国の弁護士試験は、2012年から始まり、2017年まで計6回の試験が実施されています。韓国では、日本と異なり、ロースクールへの入学者・志願者が現時点では減少傾向にはないようで、合格者を減らすべきだとする大韓弁護士協会と増やすべきだとするロースクール協会(ロースクール設置大学による団体)の意見が激しく対立しており、合格者数の設定はホット・イシューとなっているとのことでした。それで、最近5年間における大阪地裁・家裁の新受件数や近畿地方における弁護士の売上・収支の推移等についての質問がありました。

 

そのほかにも、具体的な弁護士試験の実施に関し、法曹人力課に対して、弁護士会やロースクール協会以外に、弁護士やロースクール生個人、市民からも、非常に多くのリクエスト、意見提出があるようで、1分早く試験が終了させてしまった場合の対処方法や、パソコンを用いた試験方法、地方の試験会場場所の決定方法(韓国では、現在ソウルと大田の2ヶ所でしか行われていないが、今後、試験会場を拡大する方向で検討中とのこと)など、実施に関する細かい質問もありました。

 

今回の韓国法務部のお話を聞き、韓国では、団体・個人にかかわらず国に対して自由に意見を述べており、政府は、その国民の多種多様な意見に対して真摯に耳を傾け、丁寧に対応しようとしており、政府の国民に対する真摯な姿勢をうかがえたのが印象的でした。

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