韓国大法院は、2018年7月31日に、来年初めから、刑事訴訟にも電子訴訟制度を導入することを明らかにしました。
韓国の電子訴訟制度は、2010年4月26日に始まった特許訴訟を皮切りに、2011年5月2日に民事訴訟、2013年1月21日に家事・行政訴訟、2013年9月16日に保全処分、2014年4月28日に破産・再生事件、2015年3月23日に民事執行・非訟事件の順で開始され、最後に残っていたのが刑事訴訟でした。刑事訴訟での電子訴訟制度導入によって、すべての訴訟で電子訴訟が実施されることになるようです。
従来の韓国の刑事訴訟手続における記録の閲覧・謄写は、紙の刑事記録の原本でのみ可能でしたが、一日に閲覧謄写をすることができる件数が予め決まっており、予約をしても、2~3週間先になってはじめて、閲覧謄写が可能となる状況だったようです。また、記録の謄写は、業者ではなく弁護人が行わなければならず、2016年10月1日に改正された刑事訴訟法により、記録の閲覧謄写時に個人情報について匿名処理をした上で謄写をしなければならず、閲覧謄写が遅れることが問題視されてきました。とくに、上告事件では、上告理由書の提出期間の相当部分を閲覧謄写期間に要する状態だったようです。
電子訴訟制度のもとでは、匿名処理がなされた電子記録の写しを閲覧でき、閲覧・謄写に要していた時間的、経済的な負担が軽減されることになるので、弁護士会が電子訴訟の導入を強く求めていました。
韓国大法院は、2018年7月16日から、上告事件について、記録をスキャンし、個人情報の保護措置を施したPDFファイルを、インターネットで送り、または、USBに保存して渡す方法を一部事件で実施していましたが、今回、さらに進んだ刑事電子訴訟が実現することになった格好です。
大韓弁協新聞 2018.08.06.
http://news.koreanbar.or.kr/news/articleView.html?idxno=18578
昨年12月4日の本ブログで、昨年11月24日に、「法院組織法」改正により、特許法院が審判権を有する事件等について、裁判所の許可により、当事者は、法廷で、韓国語以外の外国語による弁論が可能となったことについて書きました。
このたび、外国語による弁論が裁判所に許可された初の訴訟の期日が、韓国の特許法院で開かれることになりました。
オーストラリアの鉄鋼大手のブルースコープ・スチール(BSL)社が、本年6月20日に提訴した韓国特許庁長を被告とする特許審判院審決取消請求訴訟で、原告の弁論許可申請に対して被告も同意したことにより実現しました。
外国語による弁論が許可された事件では、訴訟当事者が法廷で通訳なく外国語で弁論することができ、外国語で作成された書面について韓国語訳文提出の義務も原則として免除されます。
ただし、韓国内の当事者は、韓国語で弁論し、韓国語の書面を提出できるほか、裁判官は、韓国語で訴訟指揮を行い、判決書も韓国語で作成されますが、弁論中の同時通訳と判決書には英訳文が提供されることになります。
大韓弁協新聞 2018.07.30.
http://news.koreanbar.or.kr/news/articleView.html?idxno=18554
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