今年は2月、3月と企画が自粛中止となり、後はコロナに翻弄される一年となりました。
緊急事態宣言の中で自粛延期された企画が、12月に集中して再設定されたことから、私は12月に労働問題の3つのテーマで講演をすることになりました。
<その1 ハラスメント法制化をどう活かすか>
12月3日に連合大阪の主催する「労働関係セミナー」で、「~ハラスメントをめぐる法改正とガイドライン~あらゆるハラスメントの廃絶に向けて」というテーマで講演しました。対象は、連合傘下の労組の役員の方々でした。
セクシュアルハラスメントに対する事業主の措置義務は、男女雇用機会均等法で2007年から法制化されていましたが、パワーハラスメントに対する事業主の措置義務は、昨年5月にようやく「労働施策総合推進法改正」として法制化が実現しました。
その後、本年6月1日から大企業にまず適用されることになりました。中小企業は2022年4月1日までは「努力義務」です。
条文の解釈を具体化する厚生労働省の「パワハラ指針」ができ、その指針の解釈についての「パワハラ通達」ができました。また労災保険の精神疾患の認定基準に「パワーハラスメント」が心理的負荷の強度「原則としてⅢ(最も強い)」として追加されました。
法律・指針・通達、そして改正された労災認定基準を利用して、職場のパワハラをどうなくしていくのか、を考える材料をお渡しできたと思います。
<その2 「新しい働き方」の危険性に迫る>
次に、12月6日には、「働く女性の人権センターいこ☆る」の主催する冬の講座で、「『新しい働き方』の危険性」というテーマでお話ししました。
2017年3月に閣議決定された「働き方改革実行計画」の中に、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」の一項がありました。内容は、「テレワーク推進」「副業・兼業の推進」。また、「非雇用型テレワーク」という項目が置かれ、これは「雇用契約によらない働き方」を整備してトラブルを防止しようというものです。
それらは粛々と各検討会により内容が詰められていたところ、このコロナ禍で、いよいよ拡大していく(させていく)方向が出されています。
さて問題は、これらの「新しい働き方」が決して労働者側から要求して得られたものではなく、使用者に使いやすい働かせ方として導入されようとしており、「労働者が働いて人間らしく生きる権利」を守る観点が欠落しがちなことだと考えます。
例えば、長時間労働を抑制できるか(現在は労働者の「自己申告」、つまり兼業していることを言わなければ使用者は長時間労働の責任を負わない方向)、労災保険・社会保険・雇用保険で不備はないか(労災保険と雇用保険は法改正があった)、労働条件を不当に下げられないか、といったところで、目を光らせておかないといけない、というお話をしました。
<その3 勤務医の就労環境では女性が活躍できない問題>
最後にクリスマスイブの12月24日には、日本泌尿器科学会総会という泌尿器科のお医者さんの学会の「ダイバーシティ推進委員会 」によるシンポで、「知っているようで知らない医師の就労環境に関わる法律」というテーマで講演しました。オンラインでの参加をしましたので、事前にパワーポイントで音声を入れ、ビデオを作成して提出する初体験をしましたが、割とうまくいきました。
「ダイバーシティ推進委員会」のこの企画は、主に女性のお医者さんが関わっておられますが、女性医師への差別は、東京医科大学入学差別問題で一躍世間に明らかになりました。出産・育児と勤務の両立が難しい「働きにくさ」がその根底にあります。
勤務医は「働き方改革関連法」で長時間労働規制の適用除外になっており、2024年まで「働き方改革」を詰める作業が続くそうです。
そんな環境のお医者さんに対して、自己犠牲的な医療従事の姿にエールを送りつつ、自らの労働者としての権利擁護を怠らないで!と強く訴えました。
その後のダイバーシティ・カフェ(ZOOMでのグループトーク)にも入れていただきましたが、一人異業種でおしゃべりに耳を傾けるのも、興味深いものでした。
・・・いずれのテーマも今後追っていこうと思っていますので、講演のご要望・お問合せは、ご遠慮なく、事務所メール問合せまでお送りください。
それでは皆さま、来年が先の見通せる年になりますように願いながら。
よいお年をお迎えください。
去る月4日、私も弁護団に入っている訴訟の勝訴判決が出ましたので、簡単にご報告します。大阪地方裁判所での、大飯原子力発電所設置変更許可取消請求訴訟です。
大飯原子力発電所の運転を許可するのは国ですが、東日本大震災で福島第一原発が地震と津波で大被害を受け、また甚大な損害をもたらしたことを受けて、国は設置や運転の許可を出す機構を再編し、「新規制基準」を設けて、その基準を満たさなければ運転の許可を出さないことにしました。
今回の訴訟は、大飯原発について国が「新規制基準」を満たすと判断して運転許可を出したのに対して、その許可を取り消すよう求めた訴訟でした。
沢山の方が、危険な原発を稼働させたくないという思いで原告になりましたが、今回の判決は、大飯原発から約120キロメートル以内に居住する原告に限定をしたため、8名の原告が請求却下とされました。それはそれで原発事故の影響を受ける範囲を狭く見すぎたもので異議があるところです。
ただ、他の原告による訴えについて、裁判所は、国の「新規制基準」該当性調査に不備があるとして運転許可の処分を取り消しました。
大飯原発は、現在は運転停止中であったため、「運転を止める」までもないのですが、今後、国は控訴をしてくるでしょうし、そうすると処分取消の効果は生じません。
文系の私がなぜ原発訴訟の弁護団に入ったかと言いますと、それは先輩の弁護士に「入って」と言われて断れなかったことに始まります。それも、まずは佐賀県の玄海原発のプルサーマル訴訟というものからでした。その後に東日本大震災が発生し、玄海原発に加えて大飯原発の弁護団にも入ることになりました。
原発訴訟の大変なところは、原発の危険性については技術的な議論になり、技術的に安全なのかどうかは、電力会社の技術者の説明に依存しがちになるところです。その説明は正しいのかどうか、原告側もわからず、裁判官ももちろん専門家でないので大変だと思います。
そうしたブラックボックスの中身の解明のような作業では勝算が見込めないのですが、今回の勝訴判決は、実際のところ、被告国側の説明が曖昧で「裁判所の問いに答える」ものになっていなかったことによります。
裁判所は「その説明では『新規制基準を満たすと判断した』ことの説明ができていない」と判断したわけです。
原子力発電所の運転に関しては、電力会社・地元・原発労働者や技術者・影響を受ける市民等々、複雑に利害関係が絡みます。「原子力発電を止める」のは重大な政策変更ですし、「原子力発電を続ける」となれば安全でなければなりません。
「安全かどうか」は市民の重大な関心事ですから、電力会社と国は誠実に詳細に説明をする姿勢が求められます。その気持ちに、大阪地裁の裁判官3名は応えてくれました。
私は、この判決の日に別の会議があって、法廷で判決を聞けず、門前の旗出しにも立ち会えませんでした。本当に残念だったな、と、写真を見ながら思います。
12月8日(火曜)に開催された長野県弁護士会の研修会で講師を務めさせて頂きました。
長野県弁護士会は、今年、国際人権委員会を発足されました。国際人権委員会は、国籍を問わず広く県民のリーガルアクセスに応えることのできる会内の体制作りがその任務とされており、その第1回研修会として「韓国・朝鮮籍の家事事件手続(離婚、相続)について」を企画されたとのことで、弁護士法人オルビスの李麗奈先生(第二東京弁護士会)とともに、講師としてお話をさせて頂いた次第です。
研修会は、昨今の新型コロナウィルス感染拡大のため、オンラインで、大阪から参加させて頂きました。
婚姻・離婚、相続に関する国際裁判管轄・準拠法、韓国の身分証明書の取得方法、日韓の家族法の相違点など、幅広い事項について概観する内容でした。
そのため、研修会準備の過程で、日韓の家族法や国際私法に関する条文、文献、裁判例などを改めて見直すことができた良い機会となりました。
貴重な機会をくださった長野県弁護士会の先生方に、厚く御礼申し上げます。
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