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「イタリアには精神科の専門入院施設がない」ということの示唆(大橋)

  つぶやき

2016-12-31-11-46-02

新年明けましておめでとうございます。今年も「憲法カフェ」講師に引き続き取り組みたいと思います。お声がけをよろしくお願いします。

 さて、正月3日に、大阪市内の「第七藝術劇場」で6日までの限定興行の映画、「むかしMATTOの町があった」を観てきました。

 「MATTOの町」とは、精神科病院のことだそうです。

 イタリアで1960年代末から、「マニコミオ」(精神科病院)に精神科患者を治安目的で強制収容し強制治療をしている実態を変える改革が始まりました。その立役者、フランコ・バザーリオ医師が、37歳で大学教員を体よく追い出されてマニコミオの院長になり、どのように現場を改革していったかを描きます。最後には「バザーリオ法」と呼ばれる180号法を1978年に制定させ、強制収容先のマニコミオを消滅させました。

 もちろん、開放処遇にし、家庭・地域に返す中では、トラブルは起こります。家族からの拒絶、暴行事件、自由な男女交際の末の妊娠などなど。

 しかしそうしたトラブルは、「誰でも長いこと家族と引き離されれば起こること」であり、「恋愛をすれば起こること」であって、「だから精神科病院はもっと厳しく患者を統制しないといけない」という結論を招く証拠にはなりません。

 イタリアで奇跡のような歴史の偶然により実現したともいえる、精神科病院をなくす運動。今は右派の巻き返しもあるそうですが、現に実現できたことならば、日本でもできそうだ、という希望を与えてくれる映画です。

 日本では、2014年の統計で、入院患者総数131万8000人のうち、精神科の入院患者は26万5000人もいます。他の疾患と比べて精神科の特徴的なのは、通院患者と入院患者がほぼ同数だということです。入院患者比率がものすごく多い。これは「社会的入院」つまり外に受け入れ先がないからやむなく入院している人の多さを窺わせます。

 今年は、特に「ヘイトスピーチへの取り組み」、日本における排外的な空気の更なる台頭(前からあったものが嵩じてきた)とどう取り組むか、そして「障害者差別への取り組み」、効率重視・能力重視の価値観とどう取り組むか、を念頭に置いて、考え発信していこうと思います。

 それらは、ひいては”個人の尊重”という憲法の理念が軽んじられている風潮にどう取り組むか、ということです。

2017-01-03-21-26-07

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